定員割れの大学が最初に直すべき5つ:原因の切り分けと改善ロードマップ

大学広報ノウハウ

第1章:なぜ大学は定員割れになるのか?構造的な原因を整理する

大学の定員割れは、単なる「志願者減少」の問題ではありません。
多くの現場では「少子化だから仕方ない」と捉えられがちですが、それだけで説明できるケースはごく一部です。実際には、構造的な要因が複合的に絡み合って発生しています。

まずは全体像を整理し、問題の本質を捉えることが重要です。

定員割れが起きる大学の共通パターン

定員割れに陥る大学には、いくつかの共通点があります。以下に典型的なパターンを整理します。

【定員割れ大学の共通特徴】
・志願者数が年々減少している
・オープンキャンパスの来場者が伸びない
・資料請求はあるが出願につながらない
・偏差値やランキングに頼った訴求が中心
・学部の魅力が具体的に伝わっていない

これらの特徴はすべて、「選ばれる理由が明確でない」という一点に集約されます。

つまり、定員割れ改善の第一歩は「自校がなぜ選ばれていないのか」を正確に理解することにあります。

少子化だけでは説明できない本質的な問題

確かに少子化は大きな外部要因です。しかし、同じ環境下でも志願者を伸ばしている大学は存在します。

この差を生むのは「マーケティングの質」です。

【環境要因 vs 内部要因】

区分 内容 コントロール可否
外部要因 少子化・進学率の変化 不可
内部要因 魅力設計・広報戦略・導線

ここで重要なのは、改善可能なのは「内部要因」だけという点です。
つまり、定員割れ改善において注力すべきは、大学自身が変えられる領域です。

「選ばれない大学」に共通する3つの構造

定員割れに悩む大学の多くは、次の3つの構造的な問題を抱えています。

①価値が言語化されていない

「教育内容は良い」「実績もある」
こうした声は多くの大学で聞かれますが、それが受験生に伝わっていないケースが大半です。

特に問題なのは以下の状態です。
・強みが抽象的(例:充実した教育)
・他大学との差が見えない
・学生の未来像が想像できない

これでは、受験生は比較検討ができません。

②ターゲットが曖昧

「幅広く来てほしい」という発想は、一見正しいようで実は逆効果です。
ターゲットが曖昧な大学ほど、メッセージがぼやけます。

【よくある失敗例】
・全方位向けのパンフレット
・誰に向けたSNSか不明確
・学部ごとの訴求が分断されている

結果として、「誰にも刺さらない」状態になります。

③導線が弱い

認知から出願までの導線設計が不十分なケースも多く見られます。

【導線の典型的な問題】
・SNS → 資料請求につながらない
・資料請求 → オープンキャンパスに来ない
・来場 → 出願に結びつかない

このように、各接点が分断されていると、どれだけ施策を打っても成果は出ません。

定員割れを放置すると起きるリスク

定員割れは単なる数値問題ではなく、大学経営全体に影響します。

【主なリスク】
・収益悪化による教育投資の縮小
・優秀な教員の流出
・ブランド価値の低下
・さらなる志願者減少の悪循環

特に重要なのは、「負のスパイラル」に入る点です。

一度ブランドが低下すると、回復には時間とコストがかかります。
そのため、早期の改善が不可欠です。

第2章:まずやるべきは原因の切り分け|5つの視点で現状を診断する

定員割れ改善において、最も重要かつ最初に取り組むべきことは「原因の切り分け」です。

多くの大学では、原因を特定しないまま施策を実行してしまい、結果として効果が出ないケースが多発しています。

例えば、
・SNSを強化したが志願者は増えない
・広告を出したが資料請求が伸びない

これは「打ち手が間違っている」のではなく、「課題認識がズレている」ことが原因です。

切り分けの重要性とよくある失敗

まず、よくある失敗を整理します。

【原因切り分けの失敗パターン】
・すべてを「認知不足」と決めつける
・競合分析をしていない
・データではなく感覚で判断する
・部門ごとにバラバラの施策を行う

これらを防ぐためには、体系的に現状を整理する必要があります。

5つの視点で行う診断フレーム

以下の5つの視点で現状を分析することで、課題を明確にできます。

視点①:認知不足(そもそも知られていない)

まず確認すべきは「存在が認知されているか」です。

【チェックポイント】
・高校生の認知率はどの程度か
・SNSフォロワー数・閲覧数
・オープンキャンパスの初参加率
・資料請求の母数

認知が不足している場合、どれだけ魅力があっても選ばれることはありません。

視点②:魅力不足(伝わっても選ばれない)

認知はあるが志願につながらない場合、魅力設計に問題があります。

【チェックポイント】
・志願率(資料請求→出願の転換率)
・学部の特徴が具体的に説明できるか
・卒業後の進路が明確か
・他大学との差別化があるか

この段階では「価値の見せ方」が重要になります。

視点③:競合比較での劣位

受験生は必ず比較します。
その中で負けている理由を把握する必要があります。

【比較項目】
・学費
・立地
・就職実績
・ブランド
・キャンパス環境

重要なのは、「どこで負けているか」を明確にすることです。

視点④:導線設計の弱さ

各接点のつながりを確認します。

【導線の理想フロー】

認知 → 興味 → 資料請求 → 来校 → 出願

【チェックポイント】
・各段階の離脱率
・接点間のつながり
・コンテンツの一貫性

どこで離脱しているかを把握することで、改善ポイントが見えてきます。

視点⑤:広報・マーケティング施策のズレ

最後に、実行している施策自体の妥当性を見直します。

【チェックポイント】
・ターゲットと媒体が一致しているか
・メッセージが一貫しているか
・データに基づいた改善ができているか
・SNS・広告・リアル施策が連動しているか

ここがズレていると、施策は「点」で終わります。

診断結果の整理方法

診断結果は、以下のように整理すると実務に落とし込みやすくなります。

【課題整理フォーマット】

項目 現状 課題 優先度
認知 SNS弱い リーチ不足
魅力 差別化弱い 訴求不足
導線 分断あり CV低い

このように整理することで、
「何から手をつけるべきか」が明確になります。

第3章:定員割れ改善のために最初に直すべき5つのポイント

ここまでで原因の切り分けができたら、次は具体的な改善アクションに移ります。
重要なのは、「すべてを同時にやらないこと」です。優先度の高いポイントから着手することで、短期間でも成果を出しやすくなります。

ここでは、実際に多くの大学で効果が出ている「最初に直すべき5つ」を整理します。

改善①:ターゲットの再定義(誰に選ばれる大学かを明確にする)

多くの大学が陥る最大の課題は「ターゲットの曖昧さ」です。
ここを明確にするだけで、すべての施策の精度が上がります。

【ターゲット再定義のフレーム】
・学力帯(例:偏差値40〜50)
・志向(例:就職重視・資格志向・地域志向)
・生活スタイル(例:一人暮らし希望・自宅通学)
・価値観(例:安定志向・挑戦志向)

【NG例】
・「幅広い高校生に来てほしい」
・「とりあえず志願者数を増やしたい」

【OK例】
・「地方在住で地元就職を希望する高校生」
・「資格取得を重視する女子学生」

ターゲットが明確になると、訴求軸・媒体選定・コンテンツが一気に具体化します。

改善②:学部・強みの再設計(価値の言語化)

ターゲットが決まったら、次は「選ばれる理由」を作ります。
ここで重要なのは「事実」ではなく「伝わる言語化」です。

【強みの再設計ステップ】
①事実の洗い出し(授業・設備・就職実績)
②ターゲット視点での価値変換
③一言で言えるコンセプトにまとめる

【例】
・事実:企業連携の授業が多い
・変換:「在学中から実務経験が積める」
・コンセプト:「就職に直結する実践型大学」

【よくある失敗】
・情報を羅列しているだけ
・他大学でも言える内容
・抽象的すぎる表現

ここを磨くことで、パンフレット・Web・SNSすべての訴求が強くなります。

改善③:SNS・デジタル施策の最適化

現在の高校生は、情報収集の多くをSNSで行います。
つまり、SNS設計は「任意施策」ではなく「必須施策」です。

【SNS運用の基本設計】
・目的:認知 or 志望度向上
・媒体:Instagram / TikTok / YouTube
・コンテンツ:学生生活・授業・就職

【効果的な投稿例】
・リアルなキャンパスライフ動画
・在学生インタビュー
・授業風景の短尺動画

【よくある失敗】
・公式感が強すぎる投稿
・更新頻度が低い
・誰向けか不明な内容

SNSは「広報」ではなく「疑似体験の提供」です。
ここを意識するだけで、成果が大きく変わります。

改善④:オープンキャンパス・体験設計の強化

来校した時点で、受験生の温度感は高い状態です。
ここでの体験が出願を左右します。

【改善ポイント】
・学生との接点を増やす
・体験型コンテンツを増やす
・将来像を具体的に見せる

【改善前→改善後】

項目 改善前 改善後
説明会 一方的な講義 双方向型
見学 校舎紹介のみ 授業体験
接点 教員中心 学生中心

特に重要なのは「学生の存在」です。
受験生は「自分が通う未来」を想像できるかで判断します。

改善⑤:高校・保護者との接点強化

大学選びは本人だけでなく、周囲の影響も大きいです。
特に高校と保護者は重要な意思決定者です。

【強化すべき接点】
・高校訪問
・進路指導教員との関係構築
・保護者向け説明会

【ポイント】
・就職実績を明確に伝える
・安心材料を提供する
・継続的に接点を持つ

ここを強化することで、志願の後押しが生まれます。

第4章:成功する大学が実践している改善施策の共通点

定員割れを脱却している大学には、明確な共通点があります。
それは「広報」ではなく「マーケティング」として戦略設計していることです。

共通点①:戦略から逆算して施策を設計している

成果を出している大学は、いきなり施策を打ちません。
必ず戦略から設計します。

【成功大学の思考プロセス】
①ターゲット設定
②価値設計
③導線設計
④施策実行

一方、失敗するケースは以下です。

【失敗パターン】
・とりあえずSNSを始める
・流行っている施策を真似する
・担当者任せで属人化する

順番を間違えると、成果は出ません。

共通点②:学生目線でコンテンツを設計している

大学側が伝えたい情報と、受験生が知りたい情報は一致しません。

【受験生が知りたいこと】
・どんな学生がいるか
・どんな生活になるか
・就職できるか

【大学が発信しがちな内容】
・理念
・歴史
・制度

このズレを解消できている大学ほど成果が出ています。

共通点③:SNSとリアル施策が連動している

オンラインとオフラインが分断されていると、効果は半減します。

【理想的な連動】

SNS → 興味喚起

オープンキャンパス → 体験

出願 → 行動

【連動施策の例】
・SNSでオープンキャンパス告知
・来場者にSNSフォロー促進
・参加後のフォローコンテンツ配信

この一貫性が成果を生みます。

共通点④:小さな改善を継続している

一発逆転の施策は存在しません。
成果を出す大学は、細かい改善を積み重ねています。

【改善の具体例】
・投稿内容のABテスト
・導線の微調整
・説明会内容の改善

これを継続できるかが分かれ道です。

第5章:すぐ動ける改善ロードマップ|半年で変える実行ステップ

最後に、実際に動き出すためのロードマップを提示します。
重要なのは「スピード」と「順序」です。

フェーズ1:現状分析(1ヶ月)

まずは現状を正確に把握します。

【実施内容】
・志願データ分析
・競合比較
・導線の可視化
・高校生アンケート

【アウトプット】
・課題リスト
・優先順位

フェーズ2:戦略設計(1〜2ヶ月)

分析結果をもとに戦略を設計します。

【設計内容】
・ターゲット設定
・価値コンセプト
・導線設計
・KPI設定

ここが最も重要なフェーズです。

フェーズ3:施策実行(3〜6ヶ月)

戦略に基づいて施策を実行します。

【実行施策例】
・SNS運用改善
・Webサイト改修
・オープンキャンパス刷新
・高校連携強化

フェーズ4:効果検証と改善

実行した施策を必ず検証します。

【チェック指標】
・認知(SNS・流入)
・興味(資料請求)
・行動(来校・出願)

改善を繰り返すことで、成果が積み上がります。

学内体制の作り方と失敗しない進め方

最後に、実行体制も重要です。

【成功する体制】
・責任者を明確にする
・部門横断で連携する
・外部パートナーを活用する

【失敗パターン】
・広報だけで完結させる
・意思決定が遅い
・データを活用しない

ここまでが、定員割れ改善の全体像です。

重要なのは、
「原因を正しく切り分け、優先順位をつけて改善すること」です。

このプロセスを踏めば、短期間でも変化を生み出すことは十分可能です。

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